傑作に込められたメッセージ「レヴェナント:蘇えりし者」レビュー

star5

1823年、西部開拓時代のアメリカ、毛皮交易が盛んな時代。未開拓地で狩猟をする一団の一人ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、森で熊に襲われ瀕死となる。さらに、仲間のフィッツジェラルド(トム・ハーディ)の裏切りにより息子のホークを殺されてしまう。グラスは復讐のため、厳しい自然の中を瀕死の体で這い進む、、、

壮絶な内容、圧巻の演技、圧倒的な映像。非の打ち所がないよこの映画。

ストーリー展開が巧みで、冒頭からほとんど状況説明もないままどんどんストーリーが進行していく。
なのに観客を置き去りにすることなく、過酷な状況の主人公の行く末と先の見えない展開が気になってラストまで一気に見れてしまう。

2時間オーバーの上映時間の割にストーリーはシンプル。大作の割に欲張り過ぎない内容は、整然としていて見やすかった。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、この映画で2年連続アカデミー監督賞受賞。間違いなく現在世界最高の映画監督
ふと思ったけど、料理とかだと有名なシェフのメニューは高くなりがちなのに、世界最高の監督でも料金が同じな映画ってかなりお得な娯楽じゃない?

自然光だけで撮影されたという、どの場面も風景カメラマンが撮影した写真のように美しい映像。圧倒されるばかりの大自然。「画力てこれかっ!」と改めて気付いた。

撮影のエマニュエル・ルベツキも2年連続アカデミー撮影賞受賞だもの、そりゃ世界一の映像だわ、風景だけでも飽きないもの。

レオナルド・ディカプリオの演技は勿論素晴らしいけれど、アカデミー賞を受賞できたのは正直驚きだった。
というのも、近年のアカデミー主演男優賞は、『博士と彼女のセオリー(2014年)』『リンカーン(2012年)』『英国王のスピーチ(2010年)』など、皆の知る偉人を好演した人が受賞することが多かった。もしくは『ダラス・バイヤーズクラブ(2013年)』のマシュー・マコノヒーのように過激な役作りをした者が受賞するものだと思っていた。

一方、レオナルド・ディカプリオが演じたヒュー・グラスは実在の人物であるものの、誰もが知る偉人ではなく人物像には不明確な点も多いらしい。
なので、役作りのモデルが明確ではない分、過去のアカデミー受賞者の流れからすると少し不利だと思っていた。

ちなみにノミネートの対抗馬は『スティーブ・ジョブズ』などで、SF映画の『オデッセイ』を除いていずれもモデルのはっきりとした伝記映画である。
ハンデを乗り越えて受賞したレオナルド・ディカプリオは本当に素晴らしいと思う。

前述の通り、主人公のヒュー・グラスは実在の人物で、多分に脚色はあるらしいものの原作と共に映画も伝記という扱いらしい。なので、ネイティブや毛皮交易なんかの設定は史実に忠実らしい。

で、この西部開拓時代を題材にしたことにはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のとても深い意味が込められているようで、それが特典映像のメイキングで詳しく説明されている。

特典映像のメイキングでは、イニャリトゥ監督がこの映画に込めたメッセージについて丁寧に時間をかけて語っている。
この西部開拓時代というのは、資本主義が自然に多大なダメージを与えだした始まりの時代であり、資源と共に本来そこにあった歴史や伝統、命までも大量に奪いだした時代。

人類の行いが自分達の首を絞め続けていることに気付いていても止められない現代。
だからこそ、イニャリトゥ監督は警鐘の意味を込めて、この資源の大量消費の始まりの時代を選んだ。

映画本編だけでは十分メッセージを伝えきれてない部分もあるので、特典映像のメイキングは必ずセットで見て欲しい
本編中で死の淵を彷徨っている主人公が、夢の中で見た景色についての説明なんかもされているので、映画をより深く楽しめる内容になっている。

映画では「息をし続けろ」という言葉で繰り返し「生きること」を強調していた。しかし、復讐を果たしたグラスはその後何を拠り所として生きていくのだろうか?
最後のグラスの表情はどんな感情からきたのだろうか?うーん、味わい深い。

レヴェナント: 蘇えりし者(原題:The Revenant/2015年/アメリカ)


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