※ネタバレあり
ある家族はドライブ中、道路に立つ男を車ではねてしまう。平然と起き上がった男は拳銃を向けていた。ところが、その男は背後にいた別の男に撃たれてしまう。車を乗っ取られ、脅されるがままに進んだ先は呪われた土地だった…
というストーリー。
ストーリーは陰惨で救いがなく典型的なジャパニーズホラーといった感じ。
この映画のゾンビは、恨みを晴らすために蘇った怨霊であり、人を食べたり感染したりはしない。
甲冑を着ているのでゾンビ感はあまりなく、どちらかというと『13日の金曜日』のジェイソンや『エルム街の悪夢』のフレディのような怪奇モンスターといった感じ。復活シーンでは満月をバックにポーズを決めたりする。カッコイイ。。。
グロ描写はきつめ。
サムライゾンビはやっぱり侍なので、討ち取った相手の首は必ず取る。
なので、かなりの生首出現率。犠牲者が増えるたび、画面は首、首、首だらけに。たくさんの生首が卒塔婆に突き立てられている光景はトラウマもの。
血飛沫の量も多く、首を斬られると同時に噴水のように血が吹き出す。血もドロリとしており気味悪い。
この映画のホラー要素は、生首が大部分を担っていたように思う。
肝心のサムライゾンビ自体に怖さがない。
その理由としては迫力不足が挙げられる。初登場時から明るい中での登場が多く、最初からはっきりとその姿が見えている。
その明るさと、全身が映る遠めのカットが多いせいで、ただのボロい甲冑を着た人に見えることもしばしば。
普段はフラフラ歩くのに、戦う時は華麗に回し蹴りを決めたりするのも生身感を強くしている。
サムライゾンビに襲われている場面も、仮面ライダーや特撮ヒーローが怪物と戦っている時のようなカットなので怖さを感じない。
ゾンビという設定のせいで、歩いて追いかけては刀を振り回すだけなのも迫力を乏しくしている。
もっと特別な能力があっても面白かったと思う。
脚本・プロデュースは北村龍平。
その北村龍平監督の『VERSUS』に出演していた俳優の坂口拓がこの映画の監督を務めている。
なので、この映画は『VERSUS』同様、怪物相手のアクション映画として見るのが正解かもしれない。
前世の因縁という設定も通じるところがある。
キャストは、
逃亡犯の次郎役は、植田浩望。新人俳優だと思って見ていたが、芸人の桜塚やっくんらしい。演技が出来るなんて意外だった。
次郎の恋人の理沙役は、夏目ナナ。元AV女優。ただのセクシー要員かと思いきやそうでもなかった。彼女も意外に演技が出来る。
仲間割れした逃亡犯役に、いしだ壱成。チャラい感じを地で行っていて一番キャラが立っていた。
チンピラ風の警官役に、やべきょうすけ。声が渋くて役にハマっていた。
その他、吹越満、荻野目慶子、グラビアアイドルの中島愛里など。
ゾンビを含め、登場人物たちは個性があって魅力的。
このあたりは、北村龍平の設定の巧みさだと思う。
ゾンビものとしては意外なほどしっかりしている設定もそうだ。
過去の怨恨を晴らされるべく集わされた者たち。
これほど被害者に殺される理由があるゾンビ映画も珍しい。
感動とまではいかないが家族愛などのドラマもある。
一方、コメディ演出は正直いらなかった。
いしだ壱成とやべきょうすけのキャラだけでコメディ要素は足りている。
新米警官がやられた時のギャグ演出は余計だった。
その他、場面ごとに外が明るくなったり暗くなったりする点が気になった。
劇中の時間と撮影している時間が合っていない。というか合わせようとしている感じがしない。
映画に集中できなくなるのできっちりして欲しかった。
ホラーをやるより、サムライゾンビ vs 逃亡犯 vs 警官 vs 家族のアクションに特化した映画の方がよかったかもしれない。
キャラと設定が良かっただけにとても惜しい。続編があるならぜひ見たい。
「死んじゃうじゃん」
鎧 サムライゾンビ(2008年/日本)