笑うに笑いづらいジョークばかりで困る。
コメディなのに終始真顔で鑑賞してしまった。
北野武監督の笑いはシュールでブラックなものが多いのは承知だが、この映画のように作品の大部分でそれをやられると、なんとも殺伐とした印象を受ける。
映画の結構な時間を小ネタが占めるので、それらを省略すると内容自体はいたってシンプル。
ストーリーを要約すると、タチの悪い詐欺集団が幅を利かせていることを知った元ヤクザ達が、かつての仲間を呼び集め抗争を仕掛けるというもの。
元ヤクザの謎の正義感。
ヤクザもヤクザまがいの詐欺集団も、どちらも迷惑な存在だが、卑怯でズル賢い詐欺集団の方がタチが悪い印象を受ける。
笑うに笑いづらい小ネタは多いが、映画がつまらないわけではない。
不思議と退屈せずに最後まで鑑賞できた。
退屈しなかった理由としては、個性的なキャラクター達とそれを演じる俳優陣の力が大きかったように思う。
藤竜也演じる龍三親分は、元組長だが息子家族には頭が上がらず、肩身の狭い老後を過ごしている。
短気ではた迷惑だが、愛嬌があり憎めない。
あっさりオレオレ詐欺に引っ掛かってしまうほど素直。
龍三親分の仲間達は、近藤正臣や中尾彬などのベテラン俳優陣。
個性的なキャラクター達を見事に演じている。
詐欺集団のボスを演じるのは安田顕。
最近はこういった腹黒い役が板に付いている。
登場人物は多いのだけれども、それぞれ個性的で紹介もちゃんとされるため、すんなり頭に入ってくる。
これは監督の手腕だと思う。
一方で、音声の悪さが気になった。
ボリュームが不安定で、会話が聞き取りづらいほど小さかったり、逆に効果音がびっくりするくらい大きかったりと、とにかくバランスが悪かった。
「元ヤクザの高齢者達が引き起こす騒動」
という面白い設定なのだが、あまり印象に残らない。
なぜか無味無臭の作品。
なんだろう?
例えるなら、すぐ内容を忘れてしまうコントを見た後のような感覚。
映画というより長いコントとして見た方が、しっくりくる気がする。
「義理も人情もありやしねえ」
龍三と七人の子分たち(2015年/日本)