※ネタバレ注意。
施錠された狭い一室で暮らす、母ジョイ(ブリー・ラーソン)と息子のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)。外の世界を知らないジャックには、その「部屋」が世界の全てだった。
何でもない親子の日常と思いきや、徐々に違和感を抱かせていき監禁された部屋だと分からせる冒頭の演出がサスペンスかホラーのようで、初端から心を掴まれてしまった。
レニー・アブラハムソン監督は「5歳にして初めて体験する外の世界はどんな風に見えるのか?」なんて難しいことをよく表現できたものだと思う。
そしてそれを演技できるジェイコブ・トレンブレイが天才。評判通りブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイの演技力はすごかった。鑑賞中は役者であるとか演技だとかは忘れさせてくれた。
ジョイは明日どうなるかも分からない状況で、本を読ませたり運動させたりとしっかりジャックを育てている。強い意思が感じられる。
しかし、部屋から脱出したジョイを取材した記者の質問は辛辣だった。
「犯人に赤ん坊を外へ出すよう頼まなかったのか?」「自由にしようとは思わなかったのか?」「最良の方法だったのか?」と立て続けに聞く。
ジョイは思いもしなかったというような表情だが、確かにそう考えるよなー。でも、非常時にましてや当時まだ未成年のジョイにそんな判断が出来たかというと難しいと思うけどな―。外野からなら何とでも正論は言えるし。
これまで気丈に振る舞って見えたジョイも、さすがにショックが大きかったらしい。なんせ必死にやってきたつもりだったのに、子供の人生を奪ったと言われたのだ。
ジョイはショックのあまり自殺を図る。
息子のジャックに注目しがちだけど一番の被害者はジョイなんだよなー。あんなこと言われたら堪らんよなー。
しかし、そんな困難も親子の絆で乗り越えていく、そして迎えたラストはとても感動的だった。
ジャックが外の世界になじみ始めた頃、監禁されていたあの「部屋」をもう一度見たいと言い出す。しかし、部屋を見たジャックは部屋が小さくなったと感じる。そして、母が「ドアを閉めようか?」と聞くがそれを断る。
新しい世界を知り、今までの世界が小さく感じる。その感覚こそまさに「成長」なんだろう。そして「過去」と決別した。特殊な環境で育ったジャックだけど、もう大丈夫だと観客を安心させてくれる良いラストだった。
子育ての経験がある母親が見たら、たぶんもっと心に響くと思う。
ルーム(原題:Room/2015年/カナダ・アイルランド)