不器用なダークヒーロー「脳男」レビュー

star3

「脳男」

個性的なダークヒーローで、名前同様にインパクトが強かった。

こういう映画は、主人公の魅力の有無が評価の大部分を占めてしまうが、
脳男は十分に魅力的で興味を惹かれる存在だった。

脳男は、映像記憶という特別な能力を持つ一方、あらゆる感情が欠落しており自発的に何かをするということが出来ない。

つまり、指示されたことしか出来ず、食事や排泄といった基本的な人間の欲求でさえ誰かの指示を必要とする。
それはまるで、プログラムされたことしか出来ないロボットみたいだ。

ストーリーは、
ある連続爆弾事件の共犯として警察に逮捕された脳男(生田斗真)。

彼の精神鑑定を任された精神科医の鷲谷真梨子(松雪泰子)は、あまりにも不自然な鑑定結果を疑問に思い、彼の秘密を解明しようと試みる。

一方で、連続爆弾魔(二階堂ふみ)からも興味を持たれた脳男は、次の標的とされ命を狙われることになる。

脳男が犯罪者を処刑するモンスターとなった経緯は、ネタバレになるので伏せておく。

この脳男というキャラクターの面白いところは、もうそのまんまロボットみたいということだ。

あらゆる自発的な欲求が無いため、誰かに教えてもらうか指示を受けないと何もできない。
まるでコンピュータが、プログラムされたことしか実行できないようなものだ。
そのため、何もないときは壁際で体育座りをして、じっと一点を見つめている。
その姿は待機状態のロボットのようでかわいい。

脳男は、その記憶力で膨大な知識・技術を習得している。
とても優秀な人物のはずだが、感情がないせいで驚くほど不器用に映る。

痛みを感じないせいなのか、怪我を恐れないのでいつも正面突破しがち。
見ていてもどかしくなる。

当然ケガをするが、出血、骨折しようが構わず目的を遂行しようとする。
それは感情のない彼自身の執念からくる行動ではなく、命令(プログラム)がそうさせる。

その姿はまるで、ロボットが壊れてもまだ動き続けようとするかの如くで、自分で命令を止められない脳男の宿命を表しており悲しくなる。

一方で敵役の連続爆弾魔は、脳男とは対象的でとても感情豊か。
警察の捜査の上をいく明晰な頭脳と、凶悪さを持っている。

殺人を宿命とされた脳男を自分と同じと思い、執拗に命を狙うようになる。
命を狙うのは魂を開放するため。殺人鬼の心理なので、ちょっとよく分からない。

明確な目的を持って行動する脳男と違い、
悪口を言われたから、気に入らないからといった動機で犯行に及んでいる。

殺人鬼となった経緯については説明されていない。
人物の掘り下げが少なかったので、敵役としてはいまいち役不足に感じた。

脳男役は生田斗真。
多彩な表情を必要としない役なので演技力についてはよく分からないが、
無表情ながら穏やで爽やかな雰囲気があって好感度はとても高い。

連続爆弾魔の緑川紀子役は二階堂ふみ。
狂気さが伝わってこず、殺人鬼役としては迫力不足だった。

精神科医の鷲谷真梨子役は松雪泰子。
知的で落ち着いた役は彼女のはまり役。
精神鑑定の場面では、過激発言があってドキドキする。

その他、緑川紀子の共犯役に太田莉菜。
二階堂ふみより狂気じみていて印象的だった。松田龍平の嫁。

鷲谷真梨子の患者役に染谷将太。
登場する場面は多くないが、表情や目の変化にただならぬ物を感じる。

個性的で謎めいたダークヒーローの物語は、なかなか骨太で見応えがあった。

あんな無垢なイケメンは女性受けもいいんじゃないだろうか。
しかし、ショッキングな場面が多いので、安易に女性にお薦めしたらまずいかもしれない。

原作は続編があるみたいなので、早めに映画の方も製作して欲しい。

「トイレや飯と同じように人殺しもできるようになったんだ」

「この世にはびこる悪を殲滅しろ。それこそがお前に与えられた使命だ」

脳男(2013年/日本)


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