※ネタバレなし。
映画冒頭で「ラストに内容を全てひっくり返してしまうほどのオチがあるから口外しないように」と注意書きがでる。
そんなことを最初に言われてしまうと、騙されるものかと身構えてしまい気楽に鑑賞できなくなった。
しかし、映画を見終えると、なるほどこれは知らない方が楽しめると思った。
なのでネタバレしないように気をつけたい。
やはり冒頭の注意書きの効力は大きく、あらゆることに疑りの目を持って鑑賞してしまう。
特にヒロインを演じた元AKBの前田敦子は、常に裏がありそうな雰囲気が出ているため、いろいろと推測してしまう。
裏がなさそうな純情そうな主人公にも、いやいや案外こういうやつが、とまた推測してしまう。
勝手に想像し過ぎて疲れた。
ラストのオチに関しては本当によく考えついたと思う。
観客をあざ笑うようだが、不快さはなく「やられたー」という爽快感があった。
オチを抜きにすると、ストーリーはいたって普通。
モテない純情青年が、好きな人のために自分を変えようと努力するというよくある話だが、それでもそこそこ楽しめる。
しかし、やはりこの作品の醍醐味はラストのオチにある。
斬新で緻密なトリックだった。
二度見が推奨されているくらいなので、たぶんヒントはそこかしこにあるのだろう。
しかし、推理しても途中で気付くのは無理だと思う。
だから最初に注意書きを見せても内容には影響しないのだろう。
時代設定が80年代ということで、ファッションや流行などが、ちょいレトロに感じられて新鮮だった。
今にして思えば、この80年代という設定もこのストーリーには必要だったことに気付く。
主演の松田翔太、ヒロインの前田敦子ともに、演技に不安もなく好感が持てた。
前田敦子はこのヒロインに適役だと思ったのだが、それは、
演技が下手=演技している感が強い=カワイ子ぶる女の演技
なのか、
演技が上手=カワイ子ぶる女を計算して上手く演じている
どっちだ?
監督の堤幸彦は、もう還暦だというのにこんな若い感性の作品を撮れるのだからすごい人だと思う。
あるいは実際に80年代に青年時代を経験しているからこそだろうか。
オチの衝撃は初見でしか得られない。
そのため、この映画をより楽しむためには、原作を読んでいてはダメだ。
しかし、原作は映像がない分だけ没入感が高く、ラストの衝撃が大きい気もする。
一度記憶を消して、原作を読んでみたい。
などと思えるくらい印象的な作品だった。
未鑑賞なら是非、前知識を持たずに鑑賞して欲しい。
「その時はこの人しかいない、絶対と思っても、絶対なんてないってことがわかる時が来る。それが分かるようになって初めて大人になる」
イニシエーション・ラブ。子供から大人への通過儀礼。
たいへん勉強になりました。
イニシエーション・ラブ(2015年/日本)