率直な感想はつまらない。
CIAの特別な訓練を受けたエージェントが過去の記憶を消され、ダメ男として生きていたが記憶が戻り…
この映画の最大の欠点は、肝心の主人公の魅力が乏しいこと。
製作者側からは、新しいスパイヒーローを狙っている感じが伝わるが、なんだか空回りしている感が否めない。
徐々に主人公の秘密が明らかになっていくのだが、こちらの興味が薄いため正体が分かってきても、あーそうですか程度の感動しかない。
政府の行った特別な実験の唯一の成功者であり、とても優秀なエージェントの主人公だが、その能力がいまいち伝わってこない。
特別な訓練を受けたと感じさせる知的な活躍は少なく、
4億ドルかけたエージェントなのにだいたい力技である。
もう少しアイディアは出なかったのだろうか。
登場人物の行動もいたって奇妙。
感情に任せた行き当たりばったりな行動ばかりで、なぜそうなる?という疑問ばかり感じた。
役者もあまり好感度は高くない。
主演はジェシー・アイゼンバーグ。
『ゾンビランド』や『ソーシャル・ネットワーク』で主役を務めた俳優だ。
マッチョさを感じさせないごく普通の若者を自然に演じられる俳優だが、どうもこの役は似合わないように思う。
ヒロインは『トワイライト・サーガ』シリーズのクリステン・スチュワートだが、後半はオロオロしているだけで見苦しい。
どの役者も浮いている印象を受け、しっかりはまっている感じは受けなかった。
見せ場なし、音楽もチープ、アイディアも乏しい。
なのに自信満々の王道ストーリー。
せめてコメディ的な要素があればと期待したがほぼなし。
一本調子で暗い展開が続く。
爽やかに終わるかに見えたラストも、エンディングのグロい悪趣味なアニメで台無し。
この映画の製作陣は自分たちの作品を客観的に見れていないのだろうか。
これを面白いと思っているのは自分達ばかりである。
それは劇中のつまらない猿の冒険にも表れていた。
エージェント・ウルトラ(原題:American Ultra/2015年/アメリカ)