東京で営んでいた工場をたたみ、余生を北海道で過ごすため移住してきたある夫婦の物語。
妻は、暇を持て余す旦那のために、庭の石塀を完成させることを提案する。
しかし、ほどなくして妻の持病が悪化し…
映画は北海道の田舎暮らしの物語だけに、のんびりゆったりとしている。
逆を言えば退屈。
ストーリーもテンプレート通りという感じで、特に新しさは感じない。
妻の死、石塀の完成、登山の展開、娘との和解、展開が安易に予想できる。
それらをメリハリなくたんたんと見せられるだけな印象。
終始、単調な展開で、
①問題発生。
②妻の遺した手紙を偶然発見。
③手紙を読んで旦那の心境が変化。
④解決。
これの繰り返し。
それでもまあいいが、
問題なのは、その手紙の持つ影響力がこちらにまったく伝わってこないことだ。
「亡くなった妻の言うことだからそうします」
だけになっており、心境が変化するに至る描写が圧倒的に不足している。
例えば、何か夫婦の過去のエピソードがあって、その過去の教訓から思い直すに至った。というのであれば、もっと違った印象になったはずだ。
物語でとても大事な意味を持つ石塀。
物語終盤にあっさり完成している。
亡き妻の念願だった石塀が完成したことに感動はいらないのか?
退屈な展開に耐えながら、山場はまだ残ってるはずだと淡い期待を抱いて鑑賞していたのに、とてもがっかりだ。
夫婦の夫役は、佐藤浩市。
今まで妻に家事を任せっきりだったため、一人になると生活力の低さが露骨に表れる。
そんな、少しだらしないどこにでもいそうな男を見事に演じている。
妻役は、樋口可南子。
優しい雰囲気で演じている。
この妻は、とても良く出来た人物で、夫の性格をよく理解している。
しかも、鋭い洞察力を持ち、いつも問題解決に導く的確なアドバイスをする。
夫の行動を予測して、手紙をあちこちに忍ばせておくといった芸当もできる。
恐るべき有能な妻である。
一部の登場人物の闇が深くて、鑑賞すると気持ちが沈む。
夫婦の娘(北川景子)は、かつて不倫相手の嫁を自殺未遂まで追い込んだ。
石塀作りを手伝う徹(野村周平)は、高校中退、空き巣に強盗、責任取るつもりもないのに彼女を妊娠させるというクズっぷり。
引くわー。
北海道らしく、ご当地タレントの大泉洋のチームNACKSの森崎博之が出演していた。映画で見るのは久しぶりな気がする
舞台が北海道だからといって、この映画に癒やしを求めてはいけない。
北海道の大自然と、そこに暮らす穏やかな人達との朗らかな交流を勝手に期待した自分がバカだった。
感動狙いなのだが、たんたんと進行するためメリハリがなく感動は薄い。
美瑛町という北海道でも屈指のロケーションだが、映画からはそれをあまり感じられなかった。
特に印象的な場面もない。
宣伝は上手かった。
「でかくて形のいい石ばかりで塀ができあがってるわけじゃない。小さくて割れた石とか、おかしな形のいびつな石とか。そういうやつらにもな、塀を支えるのに必ず役に立つ場所がある」
愛を積むひと(2015年/日本)